昭和とは遠きにありて思ふもの

音楽と旅が好きなおっちゃんが、気ままに書いています。

「君の名は」?

ちょうど台風16号が日本列島に接近している日に、ふと朝のテレビ番組で、大ヒットア
「君の名は。」予告


ニメ映画
「君の名は。」
の特集が組まれていた。


アニメ好きには常識だと笑われてしまうかも知れないが、その番組では、主要な舞台の一つが岐阜県の
飛騨古川
であること、飛騨市には映画館がなく、近くでは、二年前までは、三十年前に飛騨市にあった映画館が高山市に移転した
「高山旭座」
があったが閉館してしまい、地元の方がこの映画を見るためには、一番近いところでも、隣県である富山県の
CM「TOHOシネマズ ファボーレ富山」出演:福田瑞穂


TOHOシネマズファボーレ富山
まで一時間二十分かかる、そのため地元ではあまりこの映画を見た方がいなくて、いわゆる
「聖地巡礼」
のために大挙して人が訪れている意味が分からなかったことなどが報告されていた。


転校生 バージョン1予告


ダイジェスト(予告編)をサッと見た感じや想像からは、大林宣彦監督の尾道三部作のひ
とつ「転校生」と、かつて銭湯の女風呂がカラになるとまで言われたラジオドラマ「君の名は」を混ぜたものがモチーフとしてあったのだろうか、などと思いながら、前日までは「君の名は。」の「き」の文字も頭になかったが、映画館に出かけてみた。


時系列に並べると、まずラジオドラマ「君の名は」は、脚本家 菊田一夫原作で、1952年に放送されたもので、のちに映画化され、後年NHK朝の連続テレビ小説でも
君の名は 第1部


取り上げられた作品である。


第二次大戦中、東京大空襲の夜、焼夷弾が降り注ぐ中、偶然出会った
氏家真知子

後宮春樹
は助け合って戦火の中を逃げ惑ううちに、命からがら
数寄屋橋
までたどり着く。一夜が明けて二人はここでようやくお互いの無事を確認する。


お互いに生きていたら半年後の11月24日、それがだめならまた半年後にこの橋で会おうと約束し、お互いの名も知らぬまま別れた。


やがて、2人は戦後の渦に巻き込まれ、お互いに数寄屋橋で相手を待つも再会がかなわず、1年半後の3度目にやっと会えた時は真知子はすでに明日嫁に行くという身であった。


逢えそうで逢えない切なさは、定番とも言える。


このラジオドラマの冒頭で
「忘却とは忘れ去ることなり。忘れ得ずして忘却を誓う心の悲しさよ」
のナレーションが流れた。


このナレーションにこのドラマのすべてがあると感じる。


「忘れ得ずして忘却を誓う心の悲しさ」とは、現在とは違い、必ずしも恋愛結婚がまだ一般的ではなく、親や知人からの紹介で見合い結婚をすることの多かった時代に、どれだけ自分の意志ではなく結婚した方が多かったことか。


「転校生」は、山中恒(ひさし)による小説『おれがあいつであいつがおれで』が原作を、CMディレクターから転身した大林宣彦監督が映画化したものである。
主人公である斉藤一夫斉藤一美は、学校の帰り道、ちょっとした弾みで一緒に石段を転げ落ちてしまう。それによって、二人の身体と心は入れ替わってしまっていた。つまり一夫の体に一美の心が、一美の体に一夫の心が入ってしまったのである。
物語の終盤に再び転げ落ちて、二人は元通りになるが、お互いを愛していた。
原作は、旺文社の「小6時代」に連載され、その後書籍化された。
当時の児童文学界からは、さんざんにこき下ろされたが、映画化の大成功で、当時の批評家は黙ってしまったという。

尾道ロケ地巡り ~ 転校生編 ~


主役の小林聡美さんと尾美としのりさんが初々しい。


今回は、ほとんど下知識がないまま観に行った映画だったが、近づきそうで近づけない心の糸が、映像美とともに見事に表現された作品であった。
ラジオドラマ「君の名は」や、「転校生」のエッセンスは、見事に次代に引き継がれたといっていいだろう。
監督である新海誠さんは、ポスト宮崎駿と言われている。
宮崎駿さんの作品には、自然への畏敬の念や冒涜に対する警鐘といったメッセージが込められていて、それをヒロインたる一人の少女の成長に託すといった感があり、重要な目線はひとつだが、新海監督の作品は、もう少し個人的な、一人称と二人称の狭間の細い糸がちぎれそうでちぎれない不安定さを、ノスタルジックな映像ともに紡ぎあげる、いわば対比の妙だと思う。
男と女、私とあなた、高層ビルと集落、都会と田舎、単線と複線など、最初から二つの重要な目線がある。
宮崎監督は、東京生まれであるが、戦争を体験している世代なのに対し、新海監督は、長野県小海町の出身であり、当然戦後生まれである。
このあたりも作風に影響を与えているのかもしれない。
今回は岐阜県飛騨市が舞台となっているが、アニメの背景には、長野県の風景と思われる場所が随所に登場してくる。

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